65.友林寺の鉄造聖観音菩薩立像(ゆうりんじのてつぞうしょうかんのんぼさつりゅうぞう)
- 種別
市指定有形文化財(彫刻) - 指定年月日
令和4年9月30日 - 所在
相模原市緑区中野905 - 記号番号
市-65
内容
鉄製の仏像で、14世紀(鎌倉時代後期~南北朝時代)の作例と考えられます。像高36.4cm、台座を含む総高42.8cmで、仏像本体と仏像を乗せる蓮華座までを鋳造により一体的に造り出しています。耳の後ろを通る線で前後の鋳型を合わせており、合わせ目部分には鋳型の隙間に入り込んだ鋳バリや、仏像内部には鋳造の際に入れた中型の土が残っています。後頭部に二か所の突起があり、ここで別に作られた光背を留めていたものと考えられます。
頭部には髪の毛を束ねた宝髻や仏の性格を示す化仏、体部には条帛や裙、腰布、天衣などの衣装が表現されており、両腕のひじを曲げ、右手先は欠失しますが、左手に執った蓮華に添えるように捻じていたものと考えられます。
鉄造のため細かい表現は簡略化され、像表面は錆に覆われますが、端正な表情や衣装などの表現、整った造形には、鉄造仏像としての高い完成度を見ることができます。
いわゆる鉄仏は、平安時代末期から鎌倉時代にかけ東国を中心として流行しました。この流行は、当時の中国宋代彫刻の影響や武家の鉄に対するこだわりなどがその原因と考えられますが、その数量は銅造に比べると圧倒的に少ない状況です。そのなかで、神奈川県には伊勢原市大山寺の不動明王像及び二童子像(国指定重要文化財)や、鎌倉市覚園寺不動明王坐像(県指定重要文化財)など、代表的な鉄仏作例が残され、一中心的地域とみられています。
友林寺の鉄造聖観音菩薩立像は、神奈川県一円の文化圏内での造像とみられる作例であり、像種としても珍しく、やや小ぶりながら、造形や仕上がりなどに高い技術が見られます。本市域において中世までさかのぼる鉄仏は大変希少であるとともに、前述の鉄仏文化圏が津久井地域にも及んだことを示す具体的な資料と理解され、市域の中世彫刻を知る上で極めて貴重な文化財です。
※拝観の際には、寺への事前連絡が必要です。
参考文献
佐藤昭夫 1987 『鉄仏』日本の美術第252号 至文堂
薄井和男・塩澤寛樹 1988 『特別展 神奈川の金銅仏-銅・鉄の仏たち-』 神奈川県立博物館
薄井和男 2018 「第一章 神社と寺院 第三節 彫刻(仏像・神像)」『津久井町史』文化遺産編 相模原市
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