64.大日野原遺跡出土の土偶付深鉢形土器及び人体文深鉢形土器(おびのっぱらいせきしゅつどのどぐうつきふかばちがたどきおよびじんたいもんふかばちがたどき)
- 種別
市指定有形文化財(考古資料) - 指定年月日
令和元年9月30日 - 所在
中央区高根3-1-15 相模原市立博物館(寄託) - 記号番号
指-64
内容
緑区澤井の大日野原遺跡は、関東山地南部の山間地ながら沢井川右岸の標高250~280メートルにかけて約33ヘクタールの広がりをもつ台地上に展開する集落遺跡です。古くからこの台地の畑では、縄文時代各期や平安時代の遺物が多数採集されており、指定した縄文中期土器も耕作中の発見によるものです。
土偶付深鉢形土器は、屈折した底をもつキャリパー形で高さ42.2センチメートル、底部内面には被熱による炭化物が認められます。縄文中期は列島最初の土偶盛行期とも重なり、非日常的な祭祀具である1体のいわゆるポーズ土偶が土器の口の端にあたかも座り込んで、常用的な調理具の内側に視線を向けるような稀有な造形で表されています。また、土偶はかき取られることを前提にしてか、明らかに口縁接合が施されたとみなされます。帰属年代は約5,500~5,000年前、縄文中期中葉の勝坂式期(井戸尻段階)と考えられます。
人体文深鉢形土器は、胴部中央から底部へ向かって徐々にすぼまる円筒形で高さ25.5センチメートル、全体のおよそ半分を欠いています。現存部のほぼ全面には、縦方向の区画文の中に両手(前肢)に3本指をもつ人形様(ひとがたよう)の彫塑的な造形文様が配されています。こうした特異な文様は甲信地方に類例が多く見られ、「半人半蛙文(はんじんはんあもん)」や「蛙文(かえるもん)」などとして知られています。そこには、擬人化した両生類の図像に仮託した縄文人の自然観や死生観の発露が推察できます。帰属年代は前者と同じですが、一段階古い勝坂式期(藤内段階)と考えられます。
両土器は、縄文文化が最盛期を迎えるなかで中期縄文人の精神像がみごとに表出されたものと理解され、本市の先史時代を代表する極めて歴史上学術上の価値が高い文化財です。
これら2つの土器は、相模原市立博物館で常設展示されています。
※キャリパー形(土器)…キャリパーとは物の厚みを計る道具。内側に湾曲する口縁部の下に円筒状の胴部がすぼまるように続く土器のシルエットがその計測器に似ることからの呼称で、縄文前期後半から中期後半にかけて多産される。
参考文献
長谷川 孟 1979 「大日野原遺跡出土の縄文土器」『郵政考古』第6号
中村日出男 1979 「神奈川県大日野原遺跡出土の顔面把手付土器」『考古学ジャーナル』No.166
藤野町 1994 『藤野町史 資料編 上』
相模原市立博物館 2019 『大日野原遺跡資料調査報告書』
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