ペスト
ペストとは
- ペストは、腸内細菌科に属する通性嫌気性のグラム陰性桿菌Yersinia pestis に起因する全身性の侵襲性感染症で、ノミやエアロゾルを介して伝播します。
- 感染ルートや臨床像によって腺ペスト、肺ペスト、および敗血症型ペストに分けられます。
- 感染症法において1類感染症に位置付けられます。
流行国
ペストの流行は、アフリカ、アジア、南アメリカで発生してきましたが、1990年以降、ほとんどの患者はアフリカで発生しています。現在、最も流行している国は、マダガスカル、コンゴ民主共和国、ペルーの3か国です。なお、1926年以降日本ではペスト患者は出ていません。
症状
以下の症状と、ペスト流行国への渡航歴、げっ歯類に寄生しているノミによる咬傷の有無が診断の参考になります。
1 )腺ペスト
腺ペストはヒトペストの80~90%を占め、ペスト菌含有ノミの咬傷や、稀に、感染したヒトあるいは動物への接触により、傷口や粘膜から感染します。
臨床症状としては、通例3~7日の潜伏期の後、ノミの刺し口に近いリンパ節の腫れのほか40℃前後の突然の発熱に見舞われ、頭痛、悪寒、倦怠感、不快感、食欲不振、嘔吐、筋肉痛、疲労衰弱や精神混濁などの強い全身性の症状が現れます。通例、発症後3 ~4 日経過後に敗血症を起こし、その後2~3日以内に死亡します。
2 )敗血症型ペスト
ヒトペスト全体の約10%を占め、局所症状がないまま全身に伝播して敗血症を引き起こします。臨床症状としては急激なショック症状、および昏睡、手足の壊死、紫斑などが現れ、その後、2~3日以内に死亡します。
3 )肺ペスト
非常に稀な事例ではありますが、最も危険なタイプです。腺ペスト末期や敗血症型ペストの経過中に肺炎を続発し、肺ペストを発症します。痰やペスト菌エアロゾルを排出するようになると、この患者が感染源になってヒトからヒトへと素早く伝播します。潜伏期間は通例2~3日(最短12~15時間)です。発病後12~24時間(発病後5時間の例も記載あり)で死亡すると言われています。臨床症状としては、強烈な頭痛、嘔吐、39~41℃の発熱、急激な呼吸困難、鮮紅色の泡立った血痰を伴う重篤な肺炎像を示します。
感染経路
- 主な感染経路はペスト菌含有ノミの咬傷です。
- 肺ペストの患者の痰やエアロゾルも感染源となります。
- ペットや家畜からヒトへの感染事例も報告されています。
検査
血液、リンパ節液、喀痰等からペスト菌を分離培養・同定して、診断します。他に抗原検出、ペスト菌特異的遺伝子のPCR検出も行います。医師がペストの疑いがあると判断した場合は保健所へ連絡し、検査を行います。
治療
ストレプトマイシンなどの抗生物質を使います。早期に治療すれば予後は良好で、後遺症もほとんど残りません。
市民の皆様へ
- 流行国からの帰国時に、発熱などの症状がある人は、空港内の検疫所へ相談してください。
- 咳や痰などの症状がある場合は、マスクを着用してください。
- 医療機関受診時に、流行国から帰国したことを伝えてください。
医療機関の皆様へ
- 高熱を呈する患者を診察する際は、必ず渡航歴を確認してください。
- ペストの感染が疑われた際は、直ちに保健所疾病対策課へ連絡してください。
参考ホームページ
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