第9回 ~梅雨前線北上中~
沖縄・奄美地方は、平年よりやや遅い5月16日頃梅雨入りしました。やがて日本列島は南から次第に梅雨入りとなり、関東甲信地方でもそろそろ入梅となるでしょう。
市内でも毎年この季節は大雨や長雨により何らかの被害が発生することが予想されます。そこで今回は、気象予報士らしくこの季節のお天気について、少し詳しくおさらいしてみたいと思います。
「梅雨」は春から夏への季節が移り変わりに日本付近の東アジアの地域だけにみられる特有の季節現象で、日本では「秋霖(秋の長雨)」と並ぶ長雨の季節になります。
梅雨入り日については、気象庁の発表では「○月○日頃」と表現されており、日付は確定日ではありません。比較的天気の良い日が続いてから、雨が多く日照時間が少なくなるまでの移り変わりの時期、5日間程度の真ん中の日を、梅雨入り日としているようです。また梅雨明け日についても同様に「頃」と表現しています。ちなみに、昨年の梅雨入りは6月3日頃(平年は6月8日頃)、梅雨明けは7月10日頃(平年は7月21日頃)でした。
梅雨の季節には、日本付近に東西に伸びる前線が停滞しているのが特徴で、この前線上に次々と低気圧が発生するため、雨の日と曇りの日が短い周期で繰り返されていきます。
この停滞する前線を「梅雨前線」と言います。前線の北側はオホーツク海高気圧からの冷たく乾いた北よりの風が吹いており、南側は太平洋高気圧から暖かい湿った南よりの風が吹いています。この2つの気流が前線付近に集まって上昇気流となり雲が発生し多くの雨を降らせます。またこの季節は前線の両側の高気圧が均等な勢力を保っているので梅雨前線が長く停滞することになります。
このように梅雨前線の現われる気圧配置は安定していて、長い間日本にぐずついた天気をもたらします。梅雨時期の主役であるオホーツク海高気圧は、実は上層のジェット気流(対流圏上層に吹く強い偏西風)が深く関係しています。ジェット気流は冬の間はチベットやヒマラヤの南側を流れていますが、季節が進むに従って北上し、梅雨時期になると、チベットやヒマラヤにぶつかり分流、再びオホーツク海付近で合流します。オホーツク海付近で合流するということは、空気が集まるということなので、下降気流を生じ高気圧となります。これがオホーツク海高気圧です。さらに季節が進むと、ジェット気流はチベットの北側を流れるようになります。こうなるとオホーツク海の上空の空気の合流も弱くなり、オホーツク海高気圧の勢力も弱くなります。また同時に太平洋高気圧の勢力が強まってきますので、この頃から梅雨明けに向かうということになります。
梅雨時期の雨の降り方には「陽性型」、「陰性型」の2種類があります。「陽性型」は梅雨前線が近づいて通過するときに、暖湿な空気が活発に流入してくるので、雨が集中して激しく降ったり、また晴れたりと変化が大きくなります。「陰性型」は梅雨前線が南にあるときで、寒気の流入により雲が広がってシトシトと雨が降り続き、ぐずついた天気が続きます。一般的に、西日本では陽性型が現れやすく、九州などでは毎年のように集中豪雨などの激しい気象現象が発生しています。東日本や北日本では梅雨に前半に陰性型が、後半に陽性型が現われやすいようです。「雷が鳴ると梅雨が明ける」と言われるように、この梅雨の末期の雷を伴う大雨には十分注意が必要です。
雷雨を伴った前線が北上し、太平洋高気圧に覆われてくると、いよいよ梅雨明けです。梅雨明け後は、夏型のいいお天気が続くことが多いので「梅雨明け十日」などと言われています。
長雨が続くとやはり気分もスッキリしませんし、洗濯物もよく乾かないなど、あまりいいことはありません。カラッと晴れた青空が待ち遠しいですね。
ミニコラム《エルニーニョ現象とラニーニャ現象》
エルニーニョ現象とは、太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より高くなり、その状態が続く現象です。逆に、同じ海域で海面水温が平年より低い状態が続く現象はラニーニャ現象と呼ばれ、ひとたびエルニーニョ現象やラニーニャ現象が発生すると、日本を含め世界中で異常な天候が起こると考えられています。
気象庁は、この夏に発生するであろうラニーニャ現象の影響で、太平洋高気圧の北への張り出しが次第に強まるとみられ、「暑い夏」となることを予想しています。またNASA(アメリカ航空宇宙局)によると、世界的に「2016年は過去最も暑い年」になるとも推測されています。どうやらこの夏の猛暑への準備も怠れないようです。(ビール好きの気象予報士としては過去最も暑い夏を体感してみたい気もしますが…)
ちなみに、エルニーニョとはスペイン語で「男の子」ラニーニャとは「女の子」を意味しています。この男の子と女の子が世界中のお天気に大きな影響を与えているのですね。
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