はじめての出場 ~I救急隊長~(1)
はじめに
救急隊員として救急車に乗車し、気がつくと30数年がたちました。その間、様々な事故や急病の現場に接した経験を基に、救急隊員という独自の目線から現場を振り返ってみたいと思います。また、救急出場は、年々増加の一途を辿っていますが、紹介する事案は、あなた自身にも起き得ることと置き換え、発生した原因を私と一緒に考えて頂くことにより、事故や疾病を未然に防ぐことができれば、増加傾向にある救急件数に歯止めがかけられるのではないかと期待いたします。火事を起こさないために「火災予防」という考えがあるように、事故や疾病を未然に防ぐ「予防救急」という観点を盛り込みながら話をしたいと思います。
はじめての出場
4月から消防隊員として勤務を始め、数箇月が経過したある日、見習いの救急隊員として救急車に乗車することになりました。通常、救急隊は3名で出場しますが、見習い期間中ということで先輩隊員の指導のもとに4名で出場しました。
初日とういことで緊張しながらも、その日の夕方までは無事に勤務することが出来ましたが、この日の夕暮れ時、いまでも記憶に残る運命の救急指令が…
「本署救急隊、救急指令!○○町○○番地 乗用車の単独交通事故」。当時、こんな内容で出場指令が待機中の救急隊に出場命令が放送されたと記憶しています。現場に到着すると、乗用車が中古車販売所に展示してあった乗用車に激突しており、運転者が負傷しているようでした。先輩の救急隊員は、速やかに負傷者を救急車の中に救護し、応急処置にとりかかっていました。負傷者は、顔面血だらけで「う~う~」と唸るだけで呼びかけに応えることができません。救急隊長は、一刻を争う重症と判断し、当時、発足間もないK大学病院の救命センターへ連絡し、搬送を開始しました。搬送途中、負傷者は苦しいらしく、盛んに手足を動かし、時折、大きな息を吐き出していましたが、このとき、負傷者の口の中や周りが切れていたため、血液が車内に飛び散ります。先輩の隊員は、懸命に応急処置を実施していますが、白衣は赤く染まり、隊員自身にも血液が付着する状況でした。それでも、先輩の隊員は、淡々と冷静に処置し、何とか救命センターに到着しました。
この時、私はというと、救急車の後部座席で先輩隊員の処置を見ているだけでした。病院に到着し、気がつくと私の白衣だけ白くきれいだったことを覚えています。
署に帰り、先輩隊員と遅い夕食をとりましたが、事故を思い出すと料理に箸をつけることができない状態でした。
あれから30数年、今では冷静に行動できるようになりましたが、救急隊員のスタートとしてはあまりにも苦い経験でした。
さて、交通事故で怪我をして救急要請されることって今も多いです。事故を起こすと、被害者はもちろん、加害者も大変ですよね。今回の事故は、自分自身が起こした、いわゆる単独交通事故と言われるものですが、事故の原因ってなんだったのでしょう。事故現場はゆるいカーブというより、ほとんど直線の道路で起こっていました。居眠り?飲酒運転?スピードの出し過ぎによるハンドル操作の誤り?オーディオ操作に気をとられて?落ちた物を拾おうとして?携帯電話中?いずれも防ぐことができた過失ですね。事故の原因を考えることで、自分自身が起こさないように予防できる。そう思いませんか。
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