呼吸が苦しい ~I救急隊長~ (2)
救急隊員として勤務してから数年がたったある日。
「本署救急隊 救急指令!○○町○○番地 20歳女性 急病」、確かこんな内容で救急指令が放送されたと思います。
救急隊員として経験を重ね、現場にも慣れてきて、変な自信(俗に言う生意気になってきた?)に満ちあふれていた私は、意気揚々と現場に向かいました。
傷病者は、自宅前の路上に立っていて、救急車に手を振っていました。救急車に収容して状態を観察してみるとハアハアしていて呼吸が速く、苦しそうな顔つきで、「手足がしびれて痛い。」としきりに訴えていました。この頃、救急の勉強会などで過換気症候群という、呼吸が速く手足のしびれを訴える病態があると聞いたばかりでした。この症状は、体の中に酸素が多くなりすぎ、二酸化炭素が少なくなっているために起こる症状なので、このようなときには紙袋を口にかぶせて呼吸する(このような処置をペーパーバッグ法というらしい。)と良いことを医師からレクチャーしていただいていました。
私は、覚えたての知識を振りかざし、積載してあった袋で「この袋を口にあててしばらく呼吸をしていてください。」と告げました。しかし、その女性は、「それではダメ!息が苦しいからあそこにある酸素を吸わせて!」と救急車の壁面にある酸素吸入瓶を指差してしきりに訴えています。いくら説明しても聞いてもらえませんでしたが、何とか病院まで搬送し、医師に引き継ぐことができました。
ベテラン隊長となった今、このような傷病者の方に出会ったら?
まず、現在の症状から救急隊が最も考えられる病態、また、その処置について説明し、落ち着いて呼吸するよう呼吸様式を誘導しています。例えば・・・「ゆ~っくり呼吸しましょう。ん~、まだ速いですよ。ゆ~っくり。そうそう。」「手足のしびれはすぐには取れませんが、ゆ~っくり呼吸していれば少しずつ楽になりますよ。」って感じです。
応急処置の基本は、患者さんに説明し、同意を得て、応急処置に自ら協力してもらう。最近解ってきました。
では、過呼吸を未然に防ぐには?
過呼吸は、不安定な精神状態や異常な興奮状態のときに発症する、いわゆる心の病が原因となります。予防策としては、可能な限りマイペースな生活習慣を心掛ける。規則正しい生活をし、体内時間を正常に保つ。水泳での呼吸法(潜ったり・息止め)を身につけ、生活習慣に取り入れる。自分の考え方を変えてみる。不安になり得る環境に近づかない。などがあげられます。また、興奮作用があるカフェインの摂取をさけ、ホットミルクなどを飲むことも良いみたいです。
過呼吸症候群を起こした経験のある方、普段の生活からちょっと意識して、試してみてはいかがでしょうか。
※ペーパーバッグ法
医師によって賛否両論あるようですが、最近、ペーパーバッグ法は、逆に低酸素症の危険もあるとのことで、推奨されていないようです。
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