令和4年度「さがみはら生物多様性シンポジウム」を開催しました。
令和5年2月25日(土曜日)、相模原教育会館3階大会議室にて「さがみはら生物多様性シンポジウム」を開催しました。5回目となる今年は、「身近な生物多様性を考える~次世代へつなぐために~」をテーマとし、専門家による基調講演、市内外で活動する学生による事例発表というプログラムで行いました。
基調講演や事例発表でお話しいただいた内容を紹介します。
第1部 基調講演「うな丼の未来」
北里大学海洋生命科学部 教授 吉永 龍起 さん
人類は、昔からウナギを食べ物や信仰の対象としてきました。それは、日本でも同様で、地方によっては100以上の呼び名が存在します。また、昔からある「鰻屋」は、様々な魚を出す寿司屋と異なり、ウナギしか出しません。ウナギは、それだけで商売が成り立つ魚であり、特別な存在なのです。
このように、ウナギは昔から日本人にとってなじみの深い魚です。しかし、その一生は、長い間謎に包まれていて、約50年にわたる海洋調査でようやくその生態が明らかになってきました。ウナギは川魚と思われがちですが、海で生まれます。日本に生息しているウナギはニホンウナギですが、フィリピン海のグアム島付近で生まれ、5センチメートルほどの小さな体ではるか3000 キロにもおよぶ旅をして台湾、韓国、中国、日本へやってきます。そして10 年ほど河川で過ごして成長したウナギは、再び海に帰って繁殖し一生を終えます。近年の気候変動や乱獲、川の取水堰(しゅすいせき)などの影響でシラスウナギは数を減らしており、私たちが食べているニホンウナギ、ヨーロッパウナギは絶滅が危惧されています。
私たちの食卓に運ばれるウナギは養殖ものですが、実は卵から育てているのではなく、海から川の河口にやってきたシラスウナギを捕まえて育てたものです。土用の丑で出回るウナギの数はシラスウナギがやってくる2月頃に決まりますが、今年も数が減ることが予想されます。
このようなウナギの危機的状況はフィリピンのとある先住民の暮らしにも影響しています。狩猟民族の彼らは川で捕ったウナギを燻製にして生活に必要なものと交換するために必要な分だけしか捕っていません。その一方で、川の河口ではシラスウナギが乱獲されており、そのウナギの蒲焼きが日本に輸出され私たちの食卓に運ばれているのです。川でウナギが捕れなくなると、その村で生活する子供たちの未来が奪われることになります。このように、実は私たちの生活と遠い土地で暮らす子どもたちの未来は、つながっているのです。
第2部 活動事例発表
ビッグヒストリーから生物多様性を考える
桜美林大学リベラルアーツ学群 片山博文ゼミ(ビッグヒストリー)佐藤 舞さん(4年)
卒業論文でカンブリア紀古生物に関する内容を書いた。ビッグヒストリーの普段の活動では、ビッグバンから人類史について学び現実に適用していくようなことをしている。
今回は、生物多様性とカンブリア紀をビッグヒストリーの観点から見たとき、生物多様性は地球温暖化や絶滅危惧種の増加など不安要素があるものの、なぜ大切なのか考えていく。
エディアカラ紀に誕生した生き物は既に絶滅したが、カンブリア紀の生き物は目の発達と脊髄の発達で捕食関係が生まれた時代であり現代にも通じている。専門書でカンブリア紀がどのように扱われてきたかというと、かつては三葉虫しか載っていなかったが、ワンダフルライフという本の発行からバージェス頁岩動物群を扱った種類の豊富な図鑑が増え、アノマロカリスが三葉虫を襲っている絵などが出てくる。リアルサイズ古生物図鑑によると豊富な種類の生き物が生まれたことが分かる。
博物館でカンブリア紀を学ぶことについて、調べたところ、恐竜が展示されている博物館のうちわずかな博物館でしかカンブリア紀が紹介されていない。展示については、カンブリア紀の化石は平面なため、復元模型が立体だと分かりやすいと思う。さらに相模原市立博物館の展示の提案をしたい。相模原にはJAXAがあり、野生動物が多く生息しているほか、土器の発掘が多いことから、宇宙と自然と人の関係についての展示ができるのではないかと考えた。相模原市立博物館にはビッグヒストリーや生物多様性を学ぶポテンシャルを秘めている。
我々は単体で生きていくことができないため様々な動植物と支え合って生きていかなければならない。生物多様性の出発点となっているカンブリア紀を教育の機会に取り入れることで今生きている世界の見え方が変わってくるのではないか。
なぜなに?生物多様性
さがまち学生Club
相模女子大学 樋口愛弥さん(2年)、小松杏珠さん(2年)
和光大学 大渕凪生さん(3年)
さがみはら生物多様性ネットワークより、生物多様性を知らない私たちの視点で生物多様性を学び、生物多様性を守るためのアクションを考え、これらを同世代の若者に向けて発信する依頼を受けた。
まずは生物多様性を知るため、相模原市立博物館で1回目のフィールドワークをした。学芸員からはゲンジボタル、カワラノギク、治水を例に説明いただいた。生物多様性が危機に瀕していることを知り、私たちはどうすれば生物多様性を守れるか、しかも同世代の人が身近に取り組めるアクションは何があるか考え、地元特産の食べ物を使った料理をすることに決めた。
その理由には特産品を使った料理と生物多様性がつながっていることにある。身近な食から生物多様性の関りを知ることによって地元の食文化の理解が深まるほか、生産輸送エネルギー削減ができる。また調理で出るゴミの分別をすることで分別から生態系を守る行動につながる。
そこで2回目のフィールドワークは、食材調達のためベジたべーなさんで相模原産の特産品を中心に購入したあと、小山公民館で相模原市で減量化・資源化に取り組む“分別戦隊シゲンジャー銀河”のプラホワイトと資源循環推進課からごみの分別を学んだ。それから実際に相模原産の食材でやまゆりポークと大和芋のカレーと津久井在来大豆の味噌を使った味噌汁を作った。
以上のフィールドワークを通し、私たちは、生物多様性を守るためには一人一人が身近で簡単なことから行動すること、そして知ったことを発信していくことが生物多様性を守るのに大切なことだと思った。
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