第2話 田名火の坂と狸のはなし
田名の陽原(みなばら ※現在の南光寺(田名5648番地)周辺)から久所(ぐぞ ※現在の水郷田名)に通じる坂道を火の坂(ひのさか)と言います。
昔、坂の上に1軒の旧家に一人で暮らす気丈なおばあさんが、毎日、機(はた)を織りながら住んでいたそうです。寒い、寒いある晩、仕事を終え床に就こうと思っていた時、「今晩は、今晩は。」と雨戸をたたくので戸を開けてみると「下田名(しただな)から来た者だが、寒いのであたらせてくれ。」と若者が立っていました。いろりにあたりながらお茶を飲んで、その晩はそれで帰ったそうです。
それから二日ばかりたった同じ時間に、また、その若者が遊びに来ました。おばあさんは、濁酒(どぶろく)を飲んでいたので、若者にも飲ませたところ、いろりを囲んで何杯も飲むうちに若者は寝込んでしまいました。おばあさんは、風邪をひいてはいけないと自分の半纏(はんてん)をかけとやろうと若者を見ると、人間ではなく大きな犬のようになっていました。おばあさんは、おどろいて、犬になんかばかにされてはと、気丈にもいろりの中の灰を十能(じゅうのう ※炭火を盛って運ぶ道具)いっぱいにあびせかけました。若者はたまらず、「アツイ、アツイ、キャンキャン。」と言って、火の玉となって坂を下っていきました。
次の朝、坂の下に行ってみると、大きな狸が死んでいたそうです。近所の人がかわいそうにと坂の下にほら穴を掘り葬ってあげたそうです。
坂を火の玉のように転がったので「火の坂」と言い、今でも坂の下に狸様をまつった祠(ほこら)があります。
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