第3話 住(すみ)の蔵より子は宝
昔あるところに貧しい大工の棟梁が住友家という物持(ものもち※1)の家に出入していたそうです。ある日、住友家の御主人が「棟梁さん、私の家のお宝を見ておくれ。」と言って、蔵の中から金銀とその他いろいろのお宝をたくさん見せてくださったそうです。棟梁は、「誠にありがとうございます。」と厚くお礼を言って、「住友様、私の家には何もございませんが、少しくらいはあると思います。是非、御覧になってください。」と言うと、住友様は、「都合で、10日過ぎぐらいにお伺いします。」と約束をしました。
さて、いよいよ約束の日になりました。なにしろ棟梁の家は、長屋住まいで子供がたくさんいるだけです。棟梁は、朝早く起きて、7人の男の子に、そろいの絣(かすり※2)の着物を着せて、住友様が来るのを待ちました。
しばらくすると、住友様は、お供を2人も連れてやってきました。「お見苦しいところですが、どうぞお上がりください。」と言って座敷に通し、お茶を出し、7人の男の子を並べました。子供達は、「父上がいつもお世話になります。」と頭を下げ、お礼の言葉を言いました。住友様は、子供たちを見て、「ああ、私は情けない。1人の子供もいない。棟梁、お前は幸せ者だ。お願いだから、お前の子供を1人、養子として迎えさせておくれ。」と言いました。棟梁は、「私の家の子供など、住友様の跡継ぎなどもったいない。教養もないし、差し上げることはできません。」と断ったが、二度三度、人を立てて来るものだから、棟梁も断りきれなくなり、「わかりました。」ということで話がまとまりました。
その後、住友家とも良好な関係が続き、棟梁の家は、一生幸せに暮らしたということです。
親は子を大切に、子は親を大切にするというお話です。
※1 物持(ものもち) 多くの財産を所持する人。財産家。富豪。
※2 絣(かすり) 輪郭がかすれた同じ模様を規則的に配した織物や染物。また、その模様。
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