第11回 ~ラジオゾンデ空の旅~
今年の関東地方の夏は、当初予想していた「過去最高の暑い夏」とまではいかず、猛暑の期間もやや短かったような気がします。夏の初めに少なかった台風も、この8月9月には日本付近に多く発生して、九州のほか、東北、北海道などにも多くの被害をもたらしました。このように私たちの生活はこれらの気象現象に大きく左右され、今日の気象予報は生活そのものに深く密着した重要な情報となっています。これらの気象予報は、日本の気象観測における高度な技術が活かされ、日々私たちに提供され、まさに日進月歩でその予報精度も向上しています。
今回はその気象観測についてのお話です。
日本の気象観測は、国際的な基準に基づいて、気温、湿度、降水量、風向、風速、気圧、積雪・降雪、雲、日照時間などを測定しています。その測定の方法については、検定を受けた計測器によってほとんどが自動的に測定されています。
多くの皆さんは「アメダス」や「気象レーダー」による気象観測についてはよく知っていると思います。そこで今回はあまり知られていない「ラジオゾンデ」のお話をさせてもらいましょう。この「ラジオゾンデ」は、現在ではGPSをつけた「GPSラジオゾンデ」が主流になっていて、ごく軽量の観測機器を気球に吊り下げ、日本全国16カ所の観測地点や南極昭和基地などから1日2回(世界各地で毎日同時刻、日本時間は9時と21時)放球して高層の気象観測を行う方法です。気球が空を飛びながら高度30km程度までの気温、湿度、風向風速、気圧、高度などの観測を行い、無線を使ってリアルタイムに観測データを地上に送ってきます。気球はその後ある程度の高度まで達すると自然と破裂し、その役目を終えます。観測終了後のラジオゾンデはパラシュートが開いてゆっくりと落下します。ラジオゾンデの多くは上空の偏西風に乗って太平洋上へ落下するのですが、まれに気象条件によっては陸地に落下する場合もあるので、「拾得された方はご連絡ください」などのメッセージと連絡先が書かれています。ちなみに大きさはお弁当箱ほどで、ぶつかっても痛くない素材で覆われています。
この「ラジオゾンデ」のほかにも気象要素を立体的に捉えるために、地上から上空へ電波を飛ばし、上空の風にはね返ってくる電波の周波数変化(ドップラー効果)を計測し風の強さや方向を測定する「ウィンドプロファイラ」なども使われています。
さらに「ひまわり(静止気象衛星)」では、赤道上空35,800Kmの高さから赤外線などを使い、雲の分布や高さや海面の水温の分布などを観測しており、また、地上だけではなく海上でも「海洋気象観測船」や「海洋気象ブイ」などで風向・風速や波高、海面水温などの観測を行っています。
現在は、これらの膨大な観測データの数値を物理方程式に基づいてスーパーコンピューターなどで処理し、将来の数値を算出し「数値予報」として天気予報を作成しています。古くはベテランの予報官が知見や経験で主観的に予報を行っていた時代もありましたが、今ではコンピューターによる「数値予報」と人間の経験による「総観的予報」とを組み合わせ、よりきめの細かい柔軟な予報となっています。
ミニコラム《うろこ雲》
夏も終わりになると空には「うろこ雲」をときどき見ることができます。私の大好きな秋の気配を感じる幻想的な雲でもあります。うろこ雲は太陽の光を受けて明るく輝き、空一面を覆っても暗くはなりません。特に朝夕は太陽の光を横から受け黄金色に輝いたり、彩雲となって薄紅や緑に色づくこともあります。
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