アルコール依存症の予防
アルコール依存症とは
アルコール依存症は薬物依存のひとつです。アルコールによって身体的、心理的、社会的、そして経済的な問題が起こっており、それらの問題がアルコールを飲み続けることで悪化するとわかっていながら、止めることができない「病気」です。アルコール依存症は進行性で慢性、やがては死に至る病です。飲酒の仕方に問題を感じたら、できるだけ早く対応する必要があります。
これって問題のある飲み方なの??
Aさん 20代 男性
人事異動で慣れない部署に配属されてから、寝酒をしなければ眠れなくなってしまいました。アルコールを飲むことで眠れるようになったものの、途中で目が覚める回数が増えてきました。目が覚めると「また眠れないのではないか」と不安になり再び眠りにつくまでアルコールを飲み続けてしまいます。酒量もだんだんと増えてきて、気がつけば一晩でビール500ミリリットル缶を5本(純アルコール約100グラム)も飲むようになってしまいました。アルコールは睡眠薬ではないし、増えても身体に悪影響はないだろうと思っています。
Bさん 40代 女性
子どもが手を離れた30代後半から食後にワインを飲む習慣がついてしまいました。日中は夜に飲酒することばかり考えて、以前から続けていた趣味など全く手につきません。夕食後にワインを飲み始め「この一杯を飲んだら片付けよう」と思いながらも結局は酔いつぶれるまで飲み続け、ボトル1本を空けてしまいます(純アルコール約90グラム)。アルコール度数の低いチューハイに変えてみても、飲み続けて酔いつぶれるパターンは変わりません。朝になって夫や子どもが片付けてくれたのを見るたびに「このままではいけない」と思っています。
Cさん 60代 男性
若い頃から毎日の晩酌を欠かさず、定年退職した現在は日本酒8合(純アルコール約160グラム)を習慣的に飲酒しています。30代から肝機能障害を指摘され、50代になってからは入退院をくり返すようになりました。主治医から「少しお酒を控えましょう」と指導を受け「健康のために今度こそお酒を減らそう」とは思うものの、家に帰ると家族が隠した日本酒をいつのまにか探し出して、いつものように晩酌しています。家族は「お昼から飲むわけでもないし、飲んでいなければ良い人なのに」とただ思うばかりです。
それぞれの依存症状
Aさん、Bさん、そしてCさんも、アルコール依存症としてイメージされがちな「一日中ずっと飲んでいる」「飲んで暴れる」といった行動や「アルコールが切れると手が震える」といった身体症状は現れていないように感じられます。しかし、いずれもアルコールに依存している状態です。
Aさんは「眠りやすくなる」というアルコールの効果が飲酒の強い動機になっています。はじめは少ない量でも眠れていたのに、寝酒を重ねるうちに、同じような入眠効果を得るのに、以前よりも多くのアルコールが必要になっています。ビールに頼らなければ現在の生活が成り立たず、アルコールが手放せない状態になっています。
Bさんは日中でも飲みたい欲求が頭から離れません。アルコールを飲むことで頭がいっぱいで、他の社会活動ができなくなっています。一杯飲んだら止めようと思っていても、その行動をコントロールすることができず、やろうと思っていることができません。一度、アルコールが入ってしまうと、脳が絶えずアルコールを欲しがっているため、たとえ度数の低いものに変えたとしても飲酒した時の行動は一向に変わりません。
Cさんは夜しか飲酒していませんが、一日中アルコールを飲んでいるのと同じ状態にあります。純アルコール20グラムが体内で処理されるには約3~4時間かかるからです。160グラムを処理するには少なくとも24時間かかります。おそらくアルコールが切れてしまうと寝汗、大量の発汗、激しい動悸といった自律神経症状やイライラ、不安といった情動症状がでてきます。これらの症状を落ち着かせるため、一日分のアルコールを飲む必要があるのでしょう。また飲酒による悪影響を十分に理解しているのに、それを止めることができません。
アルコール依存の形成
アルコール依存症は習慣的に飲酒しているうちに、いつしか進行していく病気です。はじめは仲間との楽しいお酒や家庭でのリラックス方法だったのが、ストレスへの対処方法としても飲むようになり、飲むほどにアルコールに強くなり(耐性の形成)、酒量が増加していきます。
精神依存の形成
次第に、ほとんど毎日飲む、アルコールがないと物足りなく感じるようになり、さらに酒量が増え、ほろ酔い程度では飲んだ気がしなくなっていきます。ブラックアウト(記憶の欠落)を経験したり、生活の中で、次第に飲むことの優先順位が高くなっていきます。
身体依存の形成
アルコールが切れてくると、寝汗・微熱・悪寒・下痢・不眠などが出現し始めます(離脱症状)。飲む時間が待ちきれない、イライラするといった気分にもなります。他にも、健康診断で酒量を少なめに申告したり、家族からアルコールをひかえるよう注意されたりもするでしょう。離脱症状は飲酒することでおさまりますが、離脱症状を避けるために飲酒を重ねることで、身体依存が形成されていきます。
精神依存や身体依存が形成されると、アルコールが生活や考えの中心となり、仕事や学業、家事、育児、趣味などを以前のように行っていくことが難しくなります。飲酒してはいけない場面においても飲みたい気持ちを抑えられず、酒が手放せなくなってしまいます(コントロール障害)。
楽しく健康に飲み続けるために
アルコール依存症の予防に最も大切なことは適量を守って飲酒し、少なくとも週に2日は休肝日をつくることです。適量の飲酒とは「男性で1日に20グラム以内の飲酒、女性で1日に10グラム以内の飲酒」を指します。さまざまなアルコール含有飲料の純アルコール約20グラムを示します。吉田兼好も「酒は百薬の長とはいへど、よろずの病は酒よりこそ起これ」と鎌倉時代から適量飲酒の大切さと大量飲酒の危険を詠んでいます。
現在、「危険な飲酒」をしている人は特に適正飲酒を心がける必要があります。危険な飲酒とは「男性で1日に60グラム以上または1週間に200グラム以上の飲酒、女性で1日に40グラム以上または1週間に100グラム以上の飲酒」を指します。危険な飲酒をしている人は、近い将来、アルコール依存症やアルコールに関連した病気になる可能性が高いと言われる状態です。
千利休は「一盃は人酒を飲み、二盃は酒酒を飲み、三盃は酒人を飲む」と詠んでいます。これは「楽しく飲んでいるのは一杯目だけで、二杯目は酔いの惰性で飲み、三杯目は酒に飲まれてしまう」という意味です。おおむね3杯以上の飲酒から健康被害が大きくなることは、昔からよく言われていたということがわかります。危険な飲酒を避け、適正な飲酒量を心がけることで、多くの人がいつまでも健康にアルコールを楽しむことができることでしょう。
アルコール依存症の相談窓口
「もしかしたらアルコール依存症かもしれない」と感じたら下記の相談窓口へ電話してみましょう。
アルコール依存症はけっして珍しい病気ではありません。
相談することで回復することができる病気です。
相談窓口では、アルコール問題を持つ人のいる家族からの相談も受け付けています。
- 緑高齢・障害者相談課 電話042-775-8811
- 津久井高齢・障害者相談課 電話042-780-1412
- 中央高齢・障害者相談課 電話042-769-9806
- 南高齢・障害者相談課 電話042-701-7715
- 精神保健福祉センター 電話042-769-9818
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