広報さがみはら 別冊 令和4年(2022年)9月1日号 2・3面 ---------- 麻溝台・新磯野(A&A)のまちづくり これまでとこれから 麻溝台・新磯野第一整備地区土地区画整理事業とは? 圏央道相模原愛川インターチェンジに近く、更なる交通利便性の向上が期待される南区の麻溝台・新磯野地区において、産業を中心とした新たな拠点(約148ヘクタール)の推進を図っています。 その一部(第一整備地区、約38.1ヘクタール)を先行して市街化区域に編入し、魅力ある良好な市街地環境の形成を図ることを目的に、市が施行者となって進めている土地区画整理事業です。 これまで 令和元年6月の事業立ち止まり以前にどのような課題や問題があったの? 調査・準備の段階から、多くの問題や課題について法的・実務的な調整を十分せずに進めてきた結果、大量の地中障害物が確認されたことなどにより、令和元年6月からの事業の一時立ち止まりに至りました。 一時立ち止まりに至った、主な課題や問題点は、次のとおりです。 ■地中障害物についての検討が不十分でした ○地中障害物が最大の懸念点の1つでしたが、「掘ってみなければ分からない」など、地中障害物への認識が甘く、問題を過小評価して事業を推進した ○調査が不十分なまま着工した ○地中障害物の処理費を全額地権者負担としていたが、大量の地中障害物が確認された結果、処理費が土地の評価額を上回り、土地がなくなってしまう場合があり、土地区画整理法に抵触する方法だった 大量の地中障害物の状況 大量の砕いたコンクリートなど パッカー車(ごみ収集車)と廃棄物混じり土の山 平成29年〜令和元年の累計廃棄物混じり土:約57,900立方メートル →相模原市役所の本館(1から6階)約1棟分 ■基準に基づかない土地の評価を実施していました ○土地評価の実施方法などを定めた土地評価基準などによらず、特定の宅地所有者が有利となるように係数などを操作した ■資金計画に問題がありました ○地中障害物の処理費、損失補償費などの必要な費用を、資金計画に十分計上しなかった ○当初見込んでいた収入額を確保できないおそれがある中、資金計画の整理や調整、変更手続などをしなかった ◯調査で大量の地中障害物が確認されたが、資金計画を見直さなかった ■職員の不適切な行為がありました ○平成26・27年度の麻溝台・新磯野地区整備事務所長が、職員等に対して強圧的な指示や日常的なパワーハラスメントを行った ○意思決定に係る公文書や、決定に至る過程が記載された公文書が作成されていないことや、内容に疑義が生じている公文書があった ◯元職員が業者から供応接待を受けていた ○元職員が警察の調査を受ける事態になった 庁内組織や第三者委員会による検証 ◆庁内組織による内部検証(令和元年7月から令和2年2月) 事業の推進を困難にしている課題などについて確認し、再開に向けて整理すべき事項や調整事項などについて一定の方向性を示すために行ったもので、地中障害物の処理や、宅地の評価、資金計画など7項目の課題と取組の方向性をまとめました。 ◆第三者委員会(弁護士による調査)(令和2年1月から令和2年3月) 事業の政策決定、その後の契約などの過程について調査・検証し、その結果を踏まえた組織運営上の問題提起と改善策を示すために行われたもので、コンプライアンス上の意識改革や、人材の育成、適正な公文書の作成・管理など10項目の問題提起と改善策が提言されました。 市議会でも、更なる全容解明などが必要と判断し、地方自治法第100条や第98条に基づく調査権限を持つ特別委員会が設置され、証人喚問などによる調査が行われています。 経過 平成9年3月 特定保留区域に設定(第一整備地区を含む地区全体の市街化調整区域が対象) 平成17年3月 麻溝台・新磯野タウン計画策定 平成25年1月 第一整備地区の先行事業化方策を決定 平成26年5月 都市計画決定(第一整備地区の市街化区域編入等) 9月 設計の概要の認可(国土交通大臣)を受け、事業計画を決定    事業の施行に関する条例(施行規程)を制定 平成28年3月 民間事業者包括委託契約の締結 10月 地中障害物の試掘調査(11月まで) 平成29年1月 工事着手 平成30年1月 先行住宅街区(30街区・31街区)の使用収益開始 4月 産業系共同売却街区(43街区)の立地事業候補者決定 平成31年1月 先行住宅街区(29街区)の使用収益開始 令和元年6月 大量の地中障害物の発出などに伴い事業一時立ち止まり 令和元年7月 庁内組織による内部検証を開始 令和2年1月 第三者委員会を設置し調査を開始 2月 内部検証結果と今後の取り組みの公表 3月 第三者委員会の調査結果の公表    民間事業者包括委託契約の解除 7月 「相模原市組織運営の改善に向けた取組方針」の策定 令和3年4月 地中障害物などの総量を把握するための調査を開始(令和4年2月まで)    地区内の仮置き土の移設分別工事を開始(令和4年3月まで) 6月 庁内での検討(本事業の基本的な取組の方向性)(12月まで)  令和4年1月 本事業の基本的な取組の方向性を決定・公表    基本的な取組の方向性に係る地権者への個別説明(2月まで) 3月 庁内での検討(事業継続)(4月まで) 5月 本事業の再開を決定 ※特定保留区域 市街化調整区域のうち、優先的・計画的に市街化を図るべき区域。土地区画整理事業などによる計画的な市街地整備が確実になった時点で、随時、市街化区域に編入する。 ※民間事業者包括委託 民間企業の豊富な経験などを活かし、調査、設計、工事など、市が施行者として行う業務の相当部分を一括して委託し、事業を円滑に進めるもの。しかし、本市では、一部の委託にとどまっていた。 ※使用収益 土地を使用して生活や事業などができるようになること。 これから なぜ事業を再開したの? 問題や課題を解決できる見通しが立ちました ○内部検証で事業再開に向けて整理すべきとされた事項などについて、解決の見通しが立った ○総事業費について、市財政への影響も慎重に検討し、事業再開が可能であると確認できた 新たな拠点としてのポテンシャルと効果があるから ○広域交通ネットワークの活用が可能で、現在も立地を希望する企業から相談があるなど、新たな拠点としてのポテンシャルがある ○年間約9億円の税収や、雇用創出効果が見込まれ、街並みが整うことで、景観が良くなり、まちが活性化する効果も期待できる これらを総合的に勘案し、市の総合計画などで、産業を中心とした新たな拠点として位置づけて、事業を進めてきた経過なども踏まえ、令和4年5月に事業の再開を決定しました。 なお、事業を縮小や廃止に近い状態にすることは、多額の経費が必要な上に、投資効果が限られるなど、多くの課題があることが分かりました。 どんな見直しをしたの? 見直しの方針 関連する法や制度に沿って取り組むとともに、公平性を確保しつつ、事業費の圧縮、事業期間の短縮の視点を最優先に見直しを検討しました。 区画の大きさや道路、公園などを見直します ○一部の区画内の道路を廃止⇒大きな区画に ○道路や公園などの公共施設の配置や規模を変更 ○都市計画道路「麻溝台新磯野中通り線」の起点と終点を施行地区内で完結させ、道路の幅も変更 →見直しで公共施設用地を約8,000平方メートル削減。削減した面積分の土地は、売却して事業費に充てます 地中障害物などの調査や処理方法を見直します ○今後は、掘り返さず、地中レーダーなどで確認 ○すでに、掘り出した地中障害物は一部を新しいコンクリートなどを作る材料として活用予定 ※処理費の更なる削減について、引き続き、検討します 事業費に適正な費用を計上します ○地中障害物処理費用など、現時点で想定される費用を全て計上 ○施工実績や物価上昇などを踏まえ、工事や委託費の単価の見直しを実施 事業費の圧縮など、可能な限り市民負担の軽減を図ります ○地中障害物などの調査・処理方法の見直し ○道路などの公共施設の見直し ○施工計画や発注方法の合理化 などで費用を縮減 ○国の交付金の収入見込みを精査 ○売却して事業の収入とする保留地の集約化などを検討 地権者の皆さんに追加負担をいただきます ○地中障害物などを確認した土地は、一定の係数により土地の評価を低減することで、地権者から更に土地を提供(減歩)いただき、その面積を保留地として設定し売却して事業費に充当 ○道路などの公共施設を減らすことで得られた面積も、保留地として設定し売却して事業費に充当 →これらの保留地の売却で、地権者の皆さんが約14億円を追加負担(合計約65億円負担) ※保留地とは、売却して事業の収入とするための土地 ◆総事業費◆ 約319億円の案で再開 ●令和元年6月の一時立ち止まり時の事業方針で続けた場合、当初127億円(平成26年度計画)だった総事業費が約541億円(市費約422億円)に増加 ●可能な限り市民負担の軽減を視野に入れて見直し、222億円を圧縮して約319億円の案で再開 市費も約210億円圧縮し、約212億円となる想定 項目 総事業費 当初事業計画 127億円 当初事業方針の継続の場合 541億円 今回の見直し案 319億円(251億円) ※総事業費は、各段階で、必要に応じて見直します。 項目 財源(市費) 当初事業計画 43億円 当初事業方針の継続の場合 422億円 今回の見直し案 212億円(160億円) ※内訳は、概算で一般財源約108.2億円、市債約103.8億円(その内令和4年度以降は、一般財源約75.5億円、市債約84.3億円)。 項目 財源(国庫補助金) 当初事業計画 34億円 当初事業方針の継続の場合 42億円 今回の見直し案 42億円(27億円) 項目 財源(保留地処分金) 当初事業計画 50億円 当初事業方針の継続の場合 77億円 今回の見直し案 65億円(64億円) (括弧内は令和4年度以降の経費)